ドローンの設計やアップグレードにおいて、適切なブラシレスモーターの選択は非常に重要です。電気エネルギーを機械エネルギーに変換してプロペラを動かすモーターは、ドローンの頭脳とも言える存在です。最適なブラシレスモーターを選ぶことは、ドローンの性能、効率、そして飛行体験全体に大きな影響を与える可能性があります。
ブラシレスモーターを選ぶ際の重要な考慮事項
ドローンに最適なブラシレスモーターを選ぶには、速度、安定性、耐久性など、飛行特性全体に影響を与える複数の要素を考慮する必要があります。最も重要な考慮事項を詳しく説明します。
KV定格:モーター速度の理解
KV定格は、ブラシレスモーターにとって最も重要な仕様の一つです。これは、印加電圧1Vあたりのモーターの回転数(RPM)を表します。例えば、1Vを印加したモーターは2300RPMで回転し、KV定格は2300KVとなります。
- 高KVモーター:KV定格が高いモーター(例:2300 KV~2700 KV)は回転速度が速く、スピードと機敏性が重視されるレーシングドローンやFPV(一人称視点)ドローンに最適です。ただし、これらのモーターはトルクが低くなる傾向があるため、大型プロペラを使用すると効率が低下する可能性があります。
- 低KVモーター:KV定格が低いモーター(例:800 KV~1400 KV)は回転速度は低くなりますが、トルクは高くなります。特に大型プロペラを使用する場合、安定性と効率性が求められる大型ドローンや空撮プラットフォームに適しています。
モーターモデル | 直径 (mm) | 長さ (mm) | シャフト径 (mm) | 重量 (g) | 出力 (W) | 電圧 (V) |
BLDC-2015 | 20 | 15 | 2 | 35 | 25 | 12 |
BLDC-2830 | 28 | 30 | 3 | 65 | 40 | 24 |
BLDC-3548 | 35 | 48 | 5 | 150 | 120 | 36 |
BLDC-4250 | 42 | 50 | 5 | 220 | 200 | 48 |
BLDC-5055 | 50 | 55 | 6 | 330 | 350 | 48 |
BLDC-6374 | 63 | 74 | 8 | 820 | 500 | 60 |
BLDC-80100 | 80 | 100 | 10 | 1250 | 1200 | 72 |
モーターのサイズと重量
ブラシレスモーターには様々なサイズがあり、通常は2桁の数字で表されます(例:2205、2306、2812)。2桁目の数字はステーターの高さ(ミリメートル単位)、1桁目の数字はステーターの直径(ミリメートル単位)を表します。例えば、「2205」と表示されているモーターのステーターの直径は22mm、高さは5mmです。
- 小型モーター(例:1806、2204):これらのモーターは軽量コンパクトなため、重量が特に重要となる小型ドローンやマイクロクワッドコプターに最適です。高速操縦が求められるFPVレースドローンでよく使用されています。
- 大型モーター(例:2212、2814):大型モーターは重量が重いため、より大きなトルクを発揮します。これは、カメラや空撮ドローンのジンバルなど、より重いペイロードを搭載する際に不可欠です。また、大型プロペラとの併用で効率も向上します。
推力と電力要件
推力とは、ドローンを空中に浮かせるためにモーターが生み出す力の大きさです。これは、ドローンが搭載できる重量と加速速度を決定する重要な要素です。ブラシレスモーターには通常、特定のプロペラと電圧と組み合わせた際に生み出せる最大の力を示す推力定格があります。
- 推力重量比:推力重量比は2:1が目安となる場合が多いです。これは、ドローンのモーターが、ドローンの総重量(フレーム、バッテリー、ペイロードを含む)の2倍の推力を生み出す必要があることを意味します。例えば、ドローンの重量が1kgの場合、すべてのモーターの合計推力は2kgである必要があります。これにより、ホバリング、上昇、操縦に十分なパワーを確保できます。
- 出力:ワット単位で測定され、電圧と電流を掛け合わせて算出されます。ドローンに必要なモーター出力は、次の式で計算できます。
電力(W)=電圧(V)×電流(A)
- 選択したモーターが過熱したりバッテリーから過剰な電流を消費したりすることなく、ドローンの電力要件に対応できることを確認してください。
電圧とバッテリーの互換性
モーターに供給される電圧も重要な要素です。ブラシレスモーターは、使用するバッテリーの種類によって異なる特定の電圧範囲で動作するように設計されています。ドローン用バッテリーのほとんどはLiPo(リチウムポリマー)で、様々なセル数(例:3S、4S、6S)で提供されており、各セルは約3.7ボルトを供給します。
- 3Sバッテリー(11.1V):小型モーターや低消費電力のドローンに一般的に使用されます。高KVモーターは3Sバッテリーと組み合わせて使用されることが多いです。
- 4Sバッテリー(14.8V)および6Sバッテリー(22.2V):レース用ドローンや重量物運搬ドローンなど、高性能ドローン向けのより強力なモーターと組み合わせて使用されます。低KVモーターは、過熱することなく必要な回転数を達成するために、通常、高電圧バッテリーと組み合わせて使用されます。
モーターやその他の部品の損傷を防ぐため、モーターがドローンのバッテリーと互換性があることを確認してください。
プロペラのサイズとモーターの適合
プロペラはモーターのセットアップにおいて非常に重要な部分であり、モーターが電気エネルギーをどれだけ効率的に推進力に変換するかを左右します。最適なパフォーマンスを得るには、プロペラのサイズとピッチをモーターのKV定格と出力に適合させる必要があります。
- 小型プロペラ(例:4~5インチ):小型プロペラは、高KVモーター(例:2300KV以上)と組み合わせて高速飛行を実現し、主にレーシングドローンに使用されます。推力は低くなりますが、加速性能と操縦性が向上します。
- 大型プロペラ(例:6~10インチ):大型プロペラは、低KVモーター(例:800KV~1400KV)と組み合わせて安定性と効率的な飛行を実現し、特にペイロード搭載時に威力を発揮します。大型プロペラはより大きな出力を生み出すため、ドローンはより効率的にホバリングし、より多くの荷物を運ぶことができます。
プロペラのピッチも重要な要素です。ピッチが大きいほど、抗力は大きくなりますが、前進力は大きくなります。
モーターと他のドローン部品のマッチング
適切なブラシレスモーターを選ぶ際には、ESC、バッテリー、フレームなど、ドローンの重要な他の部品との互換性も確認することが重要です。
ESC(電子速度制御装置)の互換性
ESCはモーターに適切な電力を供給する役割を担っています。各モーターには、適切な電流定格のESCが必要です。例えば、モーターが負荷時に最大20アンペアの電流を消費する場合、安全で信頼性の高い動作を確保するには、少なくとも25アンペアのESCを選択する必要があります。
ESCは電流定格に加えて、使用するバッテリーの種類(3S、4Sなど)に対応し、ドローンのフライトコントローラーと互換性がある必要があります。
ESCについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください:電子速度制御装置(ESC)のトラブルシューティング
バッテリー容量とC定格
ドローンの飛行時間は、mAh(ミリアンペア時間)で表されるバッテリー容量によって決まります。モーターの容量が大きいほど一般的に消費電力も大きくなるため、より長い飛行時間を維持するには、より大容量のバッテリーが必要になります。
バッテリーのC定格も重要です。C定格は、バッテリーがどれだけ速く電力を放電できるかを示すものです。バッテリーが過熱することなく、モーターの要求を満たすのに十分な電流を供給できることを確認してください。
フレームサイズとモーターの取り付け
ドローンのフレームサイズによって、使用できるモーターの最大サイズとプロペラ径が決まります。ほとんどのドローンフレームには、特定のモーターサイズ(例:2204または2212)に合わせて設計されたモーター取り付け穴があらかじめ用意されています。選択したモーターがフレームの取り付けパターンと互換性があり、適切なプロペラサイズに対応していることを確認してください。
ブラシレスモーターを選ぶ際に避けるべきよくある間違い
ドローン用のブラシレスDCモーターを選ぶ際には、パフォーマンスの低下、過熱、さらにはドローンの損傷につながるような間違いを犯しがちです。以下に、避けるべきよくある間違いをいくつかご紹介します。
- KV定格の不適切選択:高KVモーターが必ずしも最適な選択肢とは限りません。空撮用ドローンを製作する場合は、安定性と低回転数が必要なため、低KVモーターを選択してください。一方、レーシングドローンを製作する場合は、高KVモーターを使用することで必要な速度と応答性が得られます。
- モーターとプロペラの不適合:モーターに対して大きすぎるプロペラを使用すると、過剰な電流が消費され、過熱や効率の低下につながる可能性があります。必ず、モーターメーカーが推奨するプロペラサイズをご確認ください。
- 重量の無視:重いモーターはトルクを増大させますが、ドローンの総重量も増加し、飛行時間と操縦性が低下する可能性があります。モーター出力とドローンの重量要件のバランスを常に考慮してください。
モーター選定の実例
レーシングドローン
- モーターサイズ:2205または2306
- KV定格:2300~2700 KV
- プロペラサイズ:5インチ
- バッテリー:4セル(14.8V)
- 用途:高速で応答性に優れたモーターは、素早い加速と鋭い旋回を可能にし、レースやフリースタイル飛行に最適です。KV定格が高いほど回転数が高く、5インチプロペラは速度と推力のバランスを保ち、機敏な飛行を実現します。
航空写真撮影用ドローン
- モーターサイズ:2212または2812
- KV定格:900~1200 KV
- プロペラサイズ:9~10インチ
- バッテリー:4セルまたは6セル(14.8Vまたは22.2V)
- 用途:カメラを搭載し、スムーズで安定した飛行を実現する、高トルクの安定したモーター。低いKV定格により、より低速で安定した飛行が可能になり、大型プロペラにより、ペイロードを搭載したドローンを持ち上げるための十分な推力を確保します。
長距離ドローン
- モーターサイズ:2812または3510
- KV定格:700~1000 KV
- プロペラサイズ:10インチ以上
- バッテリー:6セル(22.2V)
- 使用例:長時間飛行や長距離ミッションに適した効率重視のモーター。低KVモーターと大型プロペラを組み合わせることで、高い推力と効率的な消費電力を実現。
結論
ドローンに最適なブラシレスDCモーターを選ぶには、多くの要素をバランスよく考慮する必要があります。ドローンの具体的な要件(レース用、空撮用、遠隔ミッション用など)を考慮するだけでなく、最高の性能と効率を実現し、利益を最大化できるモーターを選ぶには、高品質のブラシレスDCモーターメーカーを選ぶことも重要です。